全国各地の寺社や旧家、資料館などに残された「鬼」「河童」「人魚」「天狗」「龍・大蛇」「異形獣」のミイラや骨を紹介した本。長年にわたる取材をもとに、ミイラや資料のカラー写真240点以上を掲載し、詳細な解説を付けている。
その多くは、もちろん科学的に見れば作り物であるのだが、著者は作り物だから価値がないとは考えない。
幸い、近年日本でも、公的な博物館が妖怪のミイラや遺物を所蔵し、展示するようになった。作り物だからといって価値を下げず、われわれの祖先が妖怪に託した思いを具現化した遺物ととらえ、見てほしい。
これまでキワモノ扱いされてきたこれらの遺物が、ようやく民俗学的な資料として日の目を見るようになってきたということだろう。
本書には「興行師が所蔵する驚愕の珍宝」として、あぐらをかいて座る河童のミイラが紹介されている。入方興業が巡業で公開してきたものとのこと。
同社代表の入方勇さんは、かつては演劇を志し、テント小屋芝居を目指していた。その勉強のため、見世物小屋の「大寅興業」に弟子入りを志願。(…)その際、先輩興行師から特別に譲られたのが河童のミイラだった。
このミイラの取材は、少し前のことなのだろう。入方興業が一世を風靡した後、2010年に入方さんの突然の自殺によって幕を閉じたことを知っているだけに、懐かしいような悲しいような、何とも複雑な気持ちになった。
2014年9月2日、学研パブリッシング、2500円。