2015年10月28日

上原善広著 『被差別のグルメ』


路地(被差別部落)の「アブラカス」、アイヌの「キトピロ」、ニブフ(北方少数民族)の「モース」、沖縄の「イラブー」、在日韓国・朝鮮人の「焼肉」など、差別されてきた人々のソウルフードでもある食べ物について描いたノンフィクション。

著者は実際に現地を訪ね歩き、さまざまな料理を食べている。その中には、アレンジを加えて一般社会に広まったものもあれば、今も地域の中で細々と食べられているものや既に食べられなくなってしまったものもある。そうした食べ物を通じて、著者は差別・被差別、民族といった問題を考えていく。

この本にはウィルタ・ニブフなど北方少数民族のことも取り上げられている。

北海道といえばアイヌが有名だが、実はさらに少数のウィルタ・ニブフという民も住んでいたことはほとんど知られていない。ウィルタとは、かつて「オロッコ」と呼ばれていた北方少数民族で、主に樺太、今のサハリン南部に住んでいた。

彼らの食を探し求めて、著者はサハリンも訪れている。そうした地道な姿勢を私は信頼する。

ノンフィクションを読む時に、こうした「著者に対する信頼感」というのはけっこう大事なものだ。短歌はノンフィクションではないけれど、やはり「作者に対する信頼感」が大事な点では共通しているように思う。

2015年10月20日、新潮新書、740円。

posted by 松村正直 at 06:18| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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