帯には「政治家、建設会社、知識人、公務員、地元とメディア……利権とタブーを炙り出す」と大きく書かれている。基地問題の背景にある沖縄の支配階級の利権や振興予算の問題点を指摘した本。
辺野古移設問題を「善良な県民の総意を無視して強引に移設を進める政府の悪行」といったシンプルな勧善懲悪の視点から捉えるのを好むジャーナリズムが、ほとんど触れてこなかったことばかりです。
という内容である。タイトルや帯文が週刊誌のように煽情的だし、ところどころデータの扱い方も恣意的で、「米国で勤務経験がある保健師さんは・・・」「先の労組幹部は・・・」「沖縄のある大学教授は・・・」といった匿名の発言の引用が多かったりと、気になる点もある。その一方で、なるほどと納得する部分も多かった。
「日本vs.沖縄」「悪vs.善」「加害者vs.被害者」といった見方で解くことができるのであれば、問題はとうの昔に決着していたでしょう。
これは、まさにその通りという気がする。そんなに単純な話ではないからこそ、解決に長い時間がかかっているのだ。
10月21日の新聞に「沖縄振興強化で一致 島尻沖縄相、翁長知事と会談 辺野古触れず」という記事が載っていた。基地問題で激しく対立していることを思えば、政府と沖縄知事とが和やかに会談しているのが不思議な気もする。けれども、
二〇一四年一一月に初当選した翁長雄志知事は、那覇市長時代に「振興策なんかいらない」と言ったことがあります。これを知事としても言い続けることができるかどうか。県民ならずとも注視していくべきでしょう。
という本書の「あとがき」は、1年前に既にそうした事態を予言していたと言っていいだろう。
2015年1月20日、新潮新書、740円。