2015年10月20日

皆藤きみ子歌集 『仏桑華』から(その6)

枯れ草の秀さへ埋めし雪の原氷採取の橇道つづく
朝光にさだまる原や橇を曳く馬の太腹蒸気(いき)たちのぼる
馬さへや深ゆきに馴れて雪洞の中にことなくまぐさ食みゐる
室内に襁褓を干してこの国に子を育つると我が一途なる
ストーブの上に襁褓を掛け並べ乳児(ちご)を育つるみ冬のながき

「朝光」12首より。

1首目、冬の雪の積もった野原を、氷を採るための橇が行き来する。
2首目、下句に臨場感がある。厳しい寒さの中で仕事をする馬の身体から湯気が立ちのぼるのだ。
3首目、深い積雪にも慣れて、どうということもなく餌を食べている馬の様子。
4首目、作者は樺太に来て4人目の子を出産している。「この国」は日本ではなく、樺太のことを指しているのだろう。
5首目、長い冬が続く土地で小さな子を育てる作者。心細さと母としての覚悟が伝わってくる。

posted by 松村正直 at 08:22| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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