まずは青山霊園にある斎藤茂吉の墓である。
地下鉄「外苑前」駅から歩いて10分ほど。
広々とした霊園の中を番地(1種イ2号13側15番)を頼りに探すと、割と簡単に見つかった。
表には「茂吉之墓」とだけ刻まれた小ぶりな墓である。
墓誌には「斎藤茂吉」「斎藤てる子」が仲良く(?)並んでいる。
(斎藤輝子の本名は「てる子」)
茂吉の墓と言えば、石田比呂志の「シンジケート非申込者の弁」(「現代短歌雁」21号)を思い出す。「穂村弘の歌集『シンジケート』に私は何の感興も湧かない」という一文から始まる文章の中に、
もしこの歌集に代表されるようなバブル短歌(俵万智以後の異常現象)が、新時代の正風として世を覆うとしたら(…)本当にそういうことになったとしたら、私は、まっ先に東京は青山の茂吉墓前に駆けつけ、腹かっさばいて殉死するしかあるまい。
という有名な一節がある。
まさに石田比呂志の面目躍如といった感じだ。
今、こんなことを言う人はもういないだろう。
茂吉の墓のすぐ近くには、大久保利通の墓もある。
この霊園には有名人の墓がごろごろあって、眺めているだけで楽しい。
2014年の4月号(60周年記念号)のP30−31の穂村さんの文章はすごく印象に残っててよく読んでます。
・遅遅として机の脚をのぼりゆく歩みは甘(かん)に至らむとして
・伊那びとは伊那の七谷住み分けて熟睡(うまい)せむかも月の下びに
・海底ゆ掬いとるがに昨(きぞ)の夜の水に沈める茶碗を洗う