焼死木くろく残れる裾野原蝦夷りんどうは茜さしつつ
岩が根をつたひ踏みのぼる登山道かそけきものか清水湧きつつ
鈴谷嶽の三峰のなだり寄るところ渓水合し滝と落つるも
頂上とおもふに霧の深くして二つ巨岩はいづ方ならむ
手をふれてほろほろと落つるフレップの小粒赤実は霧しづくして
「鈴谷嶽登山」11首より。
鈴谷嶽は標高1021メートル。栄浜―大泊間に南北に通る鈴谷山脈の主峰で、豊原から近いこともあって、登山客が多かったようだ。現在はチェーホフ山と呼ばれている。
1首目、山火事の跡が広がる裾野を歩いて行く。エゾリンドウは青紫の花なので、「茜さしつつ」は日に照らされている様子だろう。
2首目、岩の多い登山道の途中に見つけた湧き水。けっこう険しい道のようだ。
3首目、渓を流れる水が合流して、滝となって落ちているのである。
4首目、霧が立ち込めていて山頂に着いたかどうかはっきりと確認できない。二つの巨岩が頂上の目印だったのだろう。
5首目、「フレップ」(こけもも)は樺太の名物。これを採ってジャムや果実酒を作った。