京都郊外の嵯峨に生まれ、現在は宇治に住む著者が、京都人(洛中に住む人)の洛外に対する差別意識や、外からは見えない京都の裏話を記した本。
「まえがき」から京都あるあるネタの続出で、何度も笑ってしまった。京都について辛辣に書いていて相当に毒のある内容なのだが、その底には京都愛が滲んでいる。きっと、この本は京都の人がむしろ好んで読むのだろう。
別にお笑い目的の本ではなく、京都の歴史や文化に関する深い考察が随所にある。あまり知られていない事実も多く、京都の見方が変わりそうだ。
ちなみに、世間ではうやまわれる回峰行も、比叡山ではそれほど重んじられていない。立派だと思われてはいるが、ある種体育会系的な業績としても、位置づけられている。
くりかえすが、室町時代の京都では、武将たちの一行をうけいれる寺が、ふえだした。人目をよろこばせる庭が、寺でいとなまれるようになったのは、そのせいだろう。
いずれにせよ、江戸時代の堂塔や庭園は、京都の主だった観光資源になっている。多くの観光客が見ているのは、江戸幕府がささえた京都の姿にほかならない。
杉本秀太郎(フランス文学者、エッセイスト)や梅棹忠夫(民族学者、国立民族学博物館名誉教授)といった京都人のエピソードも実名で紹介されている。いやはや、おそるべし、京都人。
2015年9月30日、朝日新書、760円。
あるある、も楽しみたいと思います。
>千松信也著 『けもの道の歩き方』
も面白そうで、でもまずは最初の「僕は猟師になった」から買って今読んでます。
リアルで、ドキュメンタリーみたいです。写真もすごい。
本の紹介はとても役立っています。ありがとうございます。
脈絡なく読んでいるように見えますが、自分の中ではいろいろと関連があって、みんなつながっています。
『僕は猟師になった』も最初はリトルモアから単行本として出て、その後、新潮文庫に入りました。自分の読んだ本が文庫化されると、何だか嬉しいものです。