2015年09月19日

暖房車

河野裕子の歌集を読んでいて、小さな発見をした。

  一月十五日 晴れ 「塔」睦月歌会 暖房車に不意に泣きゐる私かな
  他人ばかりの車輛に緩(ゆる)みて
評者らは初句をつきくる甘いなりなるほど暖房車は即(つ)きすぎだ
                    『日付のある歌』

2000年1月の歌会に河野さんが出した歌について、「初句が甘い」という批評があったのだろう。このやり取りはかすかに覚えている気がする。

で、この歌がその後どうなったか。

最終ひかりに不意に泣きゐる私かな他人ばかりの車輛に緩(ゆる)みて
                    『季の栞』

なるほど、初句が「暖房車」から「最終ひかり」に改作されたわけだ。
歌会の批評を受けて推敲した跡が、こんなふうに歌集に残されていたとは。

posted by 松村正直 at 00:34| Comment(0) | 河野裕子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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