一月十五日 晴れ 「塔」睦月歌会 暖房車に不意に泣きゐる私かな
他人ばかりの車輛に緩(ゆる)みて
評者らは初句をつきくる甘いなりなるほど暖房車は即(つ)きすぎだ
『日付のある歌』
2000年1月の歌会に河野さんが出した歌について、「初句が甘い」という批評があったのだろう。このやり取りはかすかに覚えている気がする。
で、この歌がその後どうなったか。
最終ひかりに不意に泣きゐる私かな他人ばかりの車輛に緩(ゆる)みて
『季の栞』
なるほど、初句が「暖房車」から「最終ひかり」に改作されたわけだ。
歌会の批評を受けて推敲した跡が、こんなふうに歌集に残されていたとは。