札幌のフォーラムでは、若手猟師によるパネルディスカッションも行われた。パネラーの一人は二十代の大学院生だったが、あとの二人は偶然にも僕と同い年だった。事前の打ち合わせで、「四十歳手前で若手って言ってもらえるのは、狩猟の世界ぐらいやね」と苦笑しながら話していた。
いえいえ、短歌の世界もそうですよ。
「猟師」なんて名乗っていると、狩猟だけで収入を得ているとよく誤解される。「そうではない」と言うと、「じゃあ趣味なんですね」となる。僕は「それも違う」と答える。
このやり取りも、歌人がよく経験するものだ。
職業に関する話をしていると、よく「食べていけるか」というのが問題になるが、この「食べていける」というのがけっこう幅のある言葉である。100万円で食べていけるという人もいれば、1000万円あっても足りないという人もいるだろう。
だから、もちろん「食べていけるか」というのは大事なことなのだけれど、それが全てではない。生活の仕方や価値観、人生観、さらには住む場所や他人との関わりなど、様々な要素を含めて考えるべきことなのだと思う。
ちなみに、千松さんは
二〇一四年度の猟期はイノシシ六頭、シカ十頭の猟果で、一月下旬には猟を終えた。家族や友人で分けあって食べても十分すぎる量で、一年間肉には困らない。
ということで、狭義の意味での「食べていく」ことには困っていないらしい。