『ぼくは猟師になった』の著者のエッセイ20篇を収めた本。副題は「猟師が見つめる日本の自然」。「日本農業新聞」2012年12月から13年3月まで連載された「森からの頂き物」に加筆、再構成したもの。
京都に住んで普段は運送会社で働きながら、猟期にはくくり罠でイノシシやシカを捕獲する著者が、猟師ならではの視点から山の自然や動物、そして自らの暮らしについて記している。
よく「野生動物の肉は硬い」と言われるが、〇歳や一歳の若い個体の肉は軟らかいし、歳をとった個体の肉は硬い。家畜の豚も生後半年で出荷されるから軟らかいだけで、何年も飼育した老豚の肉は硬くなる。
利用されなくなってしまった現在の巨木が林立する里山林を、この現状のまま維持するのは無理がある。放置され続けてきたところに起きたナラ枯れは防ぐべきものなのだろうか?
白色レグホンはメスしか必要とされないので、オスはヒヨコのうちに殺され、産業廃棄物となるのがほとんどだ。また、メスも大規模な養鶏場では、産卵効率が落ちて生後二年を待たずに廃鶏にされるのは前述の通りだ。
近年、農作物への獣害が深刻となっていることもあり、狩猟がにわかに注目を集めている。けれども、著者はそうしたブームを歓迎しつつも、「狩猟の素晴らしさばかりが強調される昨今の風潮はちょっと気持ちが悪い」と冷静に見ている。
そこには「自分で食べる肉は自分で責任をもって調達したい」という思いのもと14年にわたって猟師を続けてきた著者の矜持がにじむ。
2015年9月16日、リトルモア、1600円。