美術批評家の椹木野衣と現代美術家の会田誠が、戦争画をめぐって行った対談をまとめたもの。藤田嗣治「○○部隊の死闘―ニューギニア戦線」、宮本三郎「萬朶隊比島沖に奮戦す」、小川原脩「アッツ島爆撃」、小磯良平「カンパル攻略(倉田中尉の奮戦)」、さらには会田の「紐育空爆之図」など30点近い戦争画を掲載している。
この本を読んで驚いたのは、茅葺き屋根の古民家の絵で有名な向井潤吉に、多くの戦争画があるということ。そうした過去は戦後、封印されてしまったのだろう。
戦争画は戦意高揚や軍部の宣伝といった文脈で語られることが多い。あるいは反対に、藤田の玉砕画に反戦の意図が込められていると賞賛されることもある。けれども、そのどちらも一面的な見方に過ぎるだろう。戦争画は何よりもまず「戦争記録画」であった点を忘れてはならない。
単に「戦争協力の是非」という話なら、今たいていの芸術家は「非」と答えるでしょう。けれど当時の日本の戦争画を見ていると、ことはそう単純でないことがわかります。「全体と個」という永遠にややこしい問題がそこにはあります。
「あとがき」に記された会田の言葉は、戦争画の奥にあるより大きな問題を浮き彫りにしている。それは、現代の短歌にとっても避けられない問題であろう。
2015年6月22日、講談社、2000円。