「いろは歌」「回文」「折句」「形象詩」など、古今東西の様々な言葉遊びの詩歌を取り上げて論じた本である。
跋文にこんな一節がある。
和田信二郎著『巧智文学』を、河出書房新社の日賀志康彦氏から頂いたのは、思へばもう一昔近くも前の話であつた。これをテキストとして、私の言語遊戯試論など草しては如何といふ注文もついてゐた。仄聞するところでは、故小野茂樹氏の蔵書の一冊であつたこの名著を、汚さず敷衍するのは容易ならぬ仕事とも思はれ、なほ数年躊躇しつつデータを蒐めてゐた。
ここに出てくる「日賀志康彦」とは高野公彦のこと。つまり、1970年に亡くなった小野茂樹の蔵書の一冊を、高野が塚本に渡して、本の執筆を勧めたというわけである。高野さんの編集者としての仕事ぶりが垣間見える内容だ。
wikipediaには、河出書房新社の「三代目社長の河出朋久は歌人でもあり、歌集『白葉集』1-3(短歌研究社、2004-06)がある。佐佐木幸綱、高野公彦、小野茂樹など学生歌人を社員登用していたこともある」と記されている。
歌人を多く雇用していたということでは、戦前の帝国水難救済会もよく知られている。石榑千亦、古泉千樫、新井洸らがここで働き、それぞれ仕事に関する歌も残している。