副題は「メディアは何を伝えているのか?」。
書き下ろし。
かつてテレビ・ディレクターの仕事をしていた著者が、テレビを含めたメディアをどのように批評的に読み解き、主体的に活用していけば良いかを述べたもの。大学でメディア・リテラシーの講義もしている著者は、自分の体験や数々の例を挙げながら、説得力のある話を展開している。
でも人は、集団になったとき、時おりとんでもない過ちを犯してしまう。集団に自分の意思を預けてしまう。これも歴史的事実。そして人が持つそんな負の属性が駆動するとき、つまり集団が暴走するとき、メディアはこれ以上ないほどの潤滑油となる。
世界は複雑だ。事象や現象は単純ではないし、一面だけでもない。でもテレビ・ニュースに代表されるメディアは、その複雑さを再構成して簡略化する。
メディアは視聴者や読者を信頼させてはいけない。なぜならメディアは信頼すべきものではない。あくまでもひとつの視点なのだ。受け取る側も絶対に信じてはいけない。これはひとつの視点なのだと意識しながら受け取るべきだ。
近年は映画監督・作家として、言論の分野においても存在感を発揮している著者の丁寧な語り口が印象に残る一冊であった。
2014年11月10日、ちくまプリマー新書、820円。