2015年08月17日

司馬遼太郎著 『「昭和」という国家』


1986年から87年にかけてNHK教育テレビで計12回にわたって放映された「雑談『昭和』への道」をまとめたもの。

戦争を体験した著者が、昭和(元年から敗戦まで)の日本はなぜあのような道を進んでしまったのかを考察している。

と言っても、明快な答が示されているというわけではない。江戸時代の多様性を評価し、「私は明治日本のファンです」と述べ、日露戦争を「祖国防衛戦争だった」と肯定的に捉える著者にとって、昭和の歴史は何とも扱いにくいものだったのだろう。

日本という国の森に、大正末年、昭和元年ぐらいから敗戦まで、魔法使いが杖をポンとたたいたのではないでしょうか。その森全体を魔法の森にしてしまった。発想された政策、戦略、あるいは国内の締めつけ、これらは全部変な、いびつなものでした。

このように著者は記して、その魔法を解くカギとして「参謀本部」や「統帥権」といった問題を持ち出す。けれども、それで何かがわかったという感じもしない。

これは何も司馬個人の責任ではなく、今もなお私たちが明治維新から敗戦までの歴史をうまく位置付けられていないことによるのだろう。それは、先日の戦後70年の安倍談話の曖昧さにもつながっている問題なのだと思う。

1999年3月30日第1刷発行、2003年12月5日第10刷発行、NHKブックス、1160円。

posted by 松村正直 at 22:15| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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