2008年に新潮社より刊行された『魂の古代学―問いつづける折口信夫』を改題して文庫化したもの。
折口信夫の遺影の飾られた研究室で学び、三十代では「折口を蛇蝎のごどくに嫌っていた」著者が、四十代に入って「折口を肯定的にとらえることができるように」なり、折口の人生や考え方の総体を一つのイメージとして示したいと考えて記した本。
第5章の「芸能を裏側から視る」は、2012年に行われた現代歌人集会秋季大会の講演「折口信夫の挑戦」(とても面白かった!)と重なる内容で、講演の口調を思い出しながら読んだ。
本書でも強調されているのは、折口と大阪の結び付きの深さである。
関西の人びとは、歴代の天皇の御陵のなかで暮らしているので、きわめて天皇というものを近しく感じている。(…)大阪人である折口も、そういう文化的風土のなかで暮らしていたのである。
ことに都会的文化の中でも、「芋、蛸、南京・芝居」という言葉に象徴されるような女の文化にとっぷりと漬かって折口は育ったのであった。折口の芸能史は、マレビト論を核とする文学発生論から派生した史論なのだが、その背後には自ら生活を楽しむ享楽的な大阪の女の家の文化があったのである。
東京や地方の都市と比べた時のこうした違いは、折口信夫を考える上でやはり欠かせないものだという気がする。
2014年9月25日、角川ソフィア文庫、920円。