副題は「言葉で固まる現代を解きほぐす」。
1982年生まれの若きライター・批評家が、「決まりきった言葉が、風邪薬の箱に明記されている効能・効果のように、あちこちで使われすぎている」という問題意識のもと、世の中の様々な紋切型を取り上げて批評した本。
「育ててくれてありがとう」「国益を損なうことになる」「誤解を恐れずに言えば」「逆にこちらが励まされました」など20の言葉を引いて、それらがどのような意識のもとに使われ、またどのような意識を生み出しているか考察している。
あらかじめストックされている言葉をサラダバー的に調合して、ベルトコンベアに流すように自分だけの花嫁の手紙は量産されていく。花嫁の手紙がいたって平凡なのは、サンプルがいたって平凡なのに、その平凡さを特別なものとして享受したつもりになるからなのだろう。
「うちの会社」というフレーズを冷静に解くと、それは「私の会社」という意味ではない。あくまでも「私が勤めている会社」ということ。ここには明らかなる距離がある。
外国人ミュージシャンのインタビューが常時「今回のアルバムは最高さ、日本のファンも気に入ってくれると思うぜ。一緒にロックしようぜ」と無暗にトゥゲザーしたがるのは、彼の真意を丁寧に日本語に落し込んだというよりも、こちらが彼のテンションを推し量って勝手な語尾を付着してきたからだろう。
どれも鋭い分析だと思う。指摘されてあらためて気が付くことも多い。
文章のテンポがとにかく速くて、追い付くのがなかなか大変だ。それにところどころ毒がある。好き嫌いの分かれそうな文章ではあるけれど、魅力のある書き手だと思う。
2015年4月25日、朝日出版社、1700円。
短歌研究7月号P61、納得の記事でした。わかりやすかったです。ありがとうございました。
でも、「紋切型」に関する話は短歌にも当てはまるものなので、面白かったです。
「短歌研究」お読みいただき、ありがとうございました。
爽快。
面白かったです。
ところどころの毒も、なかなか。
「最適化」って上手くいうなぁ、です。
>でも、「紋切型」に関する話は短歌にも当てはまるものなので
私の年月でも、同感でした。
しかし、「あとがき」の最後、声出して笑ってしまいました。
さて、これから弁当の準備と朝食の準備をして、寝ます。あ〜、面白かった。
「はじめに」に
10ポンドと15ポンドしかボールが用意されていないボウリング場で、「どちらかの球を選んでください」と言われる。自分にとって投げやすい重さは12ポンドなのだが、澄まし顔で「このどちらかで」と言われる、そんな社会である。
とありますが、短歌を作っている時もこういう感じってありますね。
ピッタリの言葉や表現というのは、なかなか簡単には見つかりません。