2002年にPHP研究所から刊行された単行本『みんなの万葉集 響きあう「こころ」と「ことば」』を改題して、文庫化したもの。
万葉集の歌の中から80首あまりを選んで鑑賞をしている。語り口が楽しく、また現代語訳も付いているので、気軽に読むことができる。
『万葉集』の時代には好きになった男性に女性が自分の着ている下着を贈ることは、一般的な行為であった。
この時代、眉が痒いと恋人がやって来るという俗信があった。そこで、恋人に会いたいと思う坂上郎女は痒くもないけれども、自分の描き眉を一生懸命掻いたのである。
男女が共寝をして別れる時には、彼女は彼氏の下着の紐を丁寧に結ぶという行為によって、好きなんですよという気持ちを表したのである。
といったあたり、「へぇ〜、そうなのか」と感心してしまった。
そういう背景を知って読むと、歌の味わいがぐんと増してくる。
2012年9月25日、角川ソフィア文庫、705円。