2011年から2013年までの作品を収めた第25歌集。
萩の花咲きなだれをるところより家なれば入る低くくぐりて
ほつほつほつ北上川に雨の粒落ちてしづかに満ぱいとなる
竹輪の穴覗く遊びにみえるみえるといへば丹後の海までも見ゆ
忠一は婉曲にして鈍刀をよそほひて斬りしよ夜更けて痛し
予定なきひと日の晴れにうきうきとをりしが大根煮てをはりたり
赤うをの煮こぼれし目の白玉はさびしくもあるか口にふふみて
里山に蟹釣ることも忘れたる蟹釣草は穂孕みにけり
しら飯を二つの茶碗によそひつつ相対きて食ぶしら飯は愛
ははこ滝といふ名かすかに不幸の香ありて冷たき峡に落ちゆく
バーの隅でひとりで飲んでゐる吾れを憧れとしていまだ果さず
2首目、雨で水量の増えた北上川。「満ぱい」という表現がおもしろい。
4首目の「忠一」は武川忠一。懇親会などで言われた言葉が、その時は何とも思わなかったのに、家に帰ってきてから深く身に沁みたのだ。
5首目、「あれもやろう、これもやろう」と思っているうちに、いつしか終ってしまう一日。
7首目、かつて子どもたちはこの草を使ってサワガニを釣ったらしい。今ではそんな遊びをする子も少なくなってしまった。
9首目、「ははこ(母子)」に「不幸の香」を嗅ぎ取っているところが独特だ。早くに母を亡くした作者の思いが滲んでいる。
2015年3月25日、KADOKAWA、2400円。
丹後の天橋立を覗くように阿蘇海の対岸に知恵の輪がある。作者はこの輪をいったのか。そうであれば、丹後の海は橋立の向こうにあるから見えない。実際はそうなのだが単純にこの遊びをもって丹後の海を想像したのだろう。阿蘇海を丹後の海とするところに無理があるのである。
「竹輪」と書いてあるのですから、竹輪の穴として読めば良いではないですか。
CMにもありますが、子どもなどがよくやる遊びです。
http://www.nissui.co.jp/product/cm/cm08.html