副題は「先住民・日本人・ロシア人」。
ユーラシアブックレット186。
18世紀以降、ロシアと日本の間で領有をめぐる争いがあり、国境が移り変ってきた千島列島について、その歴史と現状を記したもの。
先住民である千島アイヌ、さらには北海道アイヌを含めて、国境線により分断された人々の苦難が浮き彫りにされる。
国境線がどこに引かれるにしても、ユーラシア大陸と日本を繋ぐ踏み石としての千島列島の姿や価値に変わりはない。そして千島の特異な環境に相応しい生活圏、文化圏、経済圏というものがある。過去の国境線は、そのような一体性を保つべき地域を分断して日ロが対峙する空間を生み出した。
「日本」「ロシア」という国家単位の枠組みからではなく、「千島列島」という枠組みで歴史や文化を捉え直す視点が、今後ますます必要になってくるのだろう。
2013年12月10日、東洋書店、800円。