2015年05月09日

山田吉郎著 『明治短歌の河畔にて』

明治短歌の歴史を時代順に記述した本。歌誌「氷原」に2007年から2012年まで連載した文章が元になっている。

明治が四十五年という長い時間を包摂しているにもかかわらず、近代歌人の最初に取り上げられるのが落合直文や正岡子規、佐佐木信綱、与謝野鉄幹らであって、おおむね明治二十年代中頃以降に登場し活躍する歌人たちであることも気になった。

こうした問題意識を持つ著者は、八田知紀、近藤芳樹、黒田清綱、三条西季知、高崎正風、中島歌子、税所敦子ら旧派和歌の歌人や、開化新題和歌、『新体詩抄』、荻野由之の和歌改良論など、近代短歌が生まれるまでの流れを丁寧に見ていく。

これは非常に大事なことだ。こうした部分を省いてしまうと、明治の和歌(短歌)革新運動の本当の姿は見えてこない。

明治短歌の四十五年の歩みは近代的なモチーフと技法を確立する道程であったろうが、同時に和歌の伝統を常に確認しそこに立ちかえる指向をはらみつつ、展開していったとも言えるのではなかろうか。

明治の革新が常に伝統との関わりの中で進行した点を忘れてはならないのだろう。

2014年5月9日、短歌研究社、2500円。

posted by 松村正直 at 06:16| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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