さすがに印象に残る名言をたくさん残している。
本は(著書)自分でみるのがいちばん愉快だね。ほめられようがけなされようが、それは第二義的で自分で気持がいいな。
芸術は枯淡のなんのといっても覇気がなくてはだめだよ。
歌を作るとそこ(首)がこるね。小芸術だなんていってもよほど力のいるものだな。
夕暮(前田氏)の門人の何とかいうのが、辞世を作るようじゃ死なないといったが、それはそうだ。死ぬようなときは辞世どころじゃないものね。
日記というのはあとで見るといいもんだね。兄貴が死んだ時のことなんか日記を見るとはっきり思い出す。もっとも僕らは歌が日記だが。
時が批判してくれるよ。時の批判というのは峻厳だからね。一世紀もたてばだいたいおちつくな。
歌は将棋のように勝負がはっきりしないが、それでも勝負がわかるもんだ。自分はとてもかなわないとおもったときに背すじに冷汗をながすようでなくてはならないもんだ。
歌は算術のようにきちんといってはつまらない。
まあ、この面白さは実際に読んでもらうしかないだろう。
『童馬山房随聞』(昭和5年〜16年)『斎藤茂吉言行』(昭和17年〜26年)の2冊は、『佐藤佐太郎集』(全8巻)では「茂吉随聞」という題でまとめられている。第7巻「茂吉随聞1」が昭和18年まで、第8巻「茂吉随聞2」が昭和19年以降という区切りになっているが、内容は同じものだ。