2007年にクレオより刊行された本に加筆修正をして、文庫化したもの。
全国各地の暮らしに関わる民俗写真を解説付きで多数収めている。章立ては「正月」「盆行事」「稲作」「漁村の暮らし」「海女」「巫女」「人形まわし」「木地師」「さまざまな生業」「運ぶ」「市」「親族集団」「人生儀礼」。
主に昭和30年代から50年代にかけての写真が多く、今では見られなくなってしまった光景も多い。例えば「丸薬師」という仕事。写真の解説には次のようにある。
練薬をへらできざんで台の上にならべ、木ぶたをかぶせて軽く押してまわす。30秒たらずで700粒ができあがる手練の早技。
この仕事は、昭和51年に「医薬品の製造及び品質管理に関する基準」が定められたことによって廃絶になったとのこと。
これまで知らなかった風習や行事もあったので、いくつか引く。
豆占(まめうら) 正月14日の夜、いろりの灰の上に12個の大豆をならべて置く。
餓鬼棚 盆棚には先祖や家族の霊を祭る「本棚」と、無縁仏を祭る「餓鬼棚」がある。
水口祭り わが家の田圃の水口に菖蒲、小手毬などの花をかざり、饌米を供え、神酒をそそぐ。
2014年11月25日、角川ソフィア文庫、1280円。