2015年04月27日

中国新聞取材班編 『猪変』

著者 :
本の雑誌社
発売日 : 2015-02-05

タイトルは「いへん」。
2002年12月から半年にわたって中国新聞に連載された企画報道をまとめたもの。終章に「「猪変」その後」を追加している。

瀬戸内海を泳ぐ猪の話から始まって、中国地方の農作物に大きな被害を与えている猪の実態へと迫っていくルポルタージュ。

そこから見えてくるのは、農山村の高齢化や人口減少によって手入れのされない里山や耕作放棄地が増えている現状である。また、駆除を中心とした猪対策が駆除自体を目的化してしまい、農作物の被害の減少につながってない問題も浮き彫りにされる。

いずれも、猪の問題というよりは人間側の問題である。地方の疲弊やコミュニティの崩壊といった問題が、猪問題にも深い影を落としている。

中国地方のことだけではなく、ポーランドやフランスにおける狩猟文化や北海道におけるエゾシカ対策のことなども取り上げている。新聞社の取材力が遺憾なく発揮された一冊と言っていいだろう。

2015年2月20日、本の雑誌社、1600円。

posted by 松村正直 at 06:49| Comment(2) | 狩猟・食肉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
ときどきこちらのブログにお邪魔して、短歌のことや書評など、楽しく読ませて頂いています。

今日は猪ですね!
私の住む広島では、通学路や住居の向かいの雑木林に大きな猪がおり、軽トラで猟友会が猟犬とともに駆けつける、という事態もあり、関東からの転入組は目を白黒させたことがあります。
なんでもご近所のおじいさんがせっせと捨てる生ゴミ目当てに、大きな猪が住みついたんだそうです。

この本、今度図書館で借りてみようと思います!
Posted by もも at 2015年04月27日 21:39
ブログをお読みいただき、ありがとうございます。いつも雑多な内容で恐縮です。

広島市の話も載ってますね。「市全域の猪駆除数は右肩上がりで、〇二年度は千五十四頭と、三年前の一・七倍に増えた」とあります。

広島市西区の己斐峠で撮影された「道路わきの溝に身を隠し、投げ捨てられたごみから餌を探すイノシシ」の写真もありました。
Posted by 松村正直 at 2015年04月28日 06:30
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