打ちあぐる波に濡れつつ曳きてくる昆布は長し砂に並べぬ
砂の上を幼きも母に従ひて曳きずりて来る小さき昆布を
夕映えに鰊をはづすをみな等が鱗だらけになりて余念なし
子供らが曳く手車は柳葉に消えし提灯もありて揺れゆく
夜の部屋に取り散らしたる書のなかに疲れたるわれや眼(まなこ)あきつつ
「昆布」5首より。
1首目、樺太の西海岸は昆布の産地でもあった。昆布を浜で干しているところ。
2首目、小さな子供も母の手伝いをして海から昆布を引き上げている。
3首目、西海岸は鰊漁も有名であった。陸で女たちが網から鰊を取り外している場面。
4首目には「七夕祭」という注が付いている。柳や提灯を飾った山車を曳いて町内を練り歩いているのだろう。
5首目、何か調べものでもしていたのか。結句「眼閉じつつ」ではなく「眼あきつつ」としたところに、虚脱感がよく出ている。