2015年04月01日

白石良夫著 『古語と現代語のあいだ』


副題は「ミッシングリンクを紐解く」。
著者は長らく文部省で教科書検定に従事した国文学者。

「近代短歌」「擬古文」「仮名遣い」を取り上げて、古語と現代語とのつながりを論じた本。両者が地続きであることを述べるとともに、国文学者などが不自然につなげてしまった点を断ち切ることを目指している。

牧水の代表歌である「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」や「いざ行かむ行きてまだ見ぬ山を見むこのさびしさに君は耐ふるや」を読み解くなかで、

牧水の研究において、実証主義イコール学問という信仰が、作品理解をあらぬ方向にひっぱっている

と述べている部分など、なかなか刺激的である。

他にも、「をこ(痴)めく」が「おこめく」「おごめく」と書かれたことによって、「おごめく」という本来はなかった言葉が生み出され、「うごめく(蠢く)」と同じ意味で読まれている話など、興味深い例が数多く挙げられている。

ただ、全体に他の学者への批判や自説が受け入れられない恨み言が多いのが気になった。せっかく大事なことを書いているのだから、それを「わたしの答案が教科書検定の現場や教科書そのものの記述に採用されることは、ほとんどなかった」という文脈で語る必要はないだろう。

2013年6月10日、NHK出版、740円。

posted by 松村正直 at 06:22| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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