2015年03月30日

秋葉四郎著 『鑑賞・現代短歌四 佐藤佐太郎』


佐藤佐太郎の秀歌100首を選んで鑑賞文を付したもの。
あらためて良い歌が多いことに感じ入る。

山葵田(わさびだ)をやしなふ水は一谷(ひとたに)にさわがしきまで音ぞきこゆる
音たてて流るるみづに茂りたる山葵の葉群(はむら)やまず動きぬ
植ゑつけしばかりの山葵二株づつ石に敷かれて水になびかふ
山葵田のふる雨に人働きてわさびの香するところ過ぎゆく
白々と見ゆるわさびの長茎(ながくき)を背に負ひながら帰りゆく人

第3歌集『しろたへ』の「山葵田」15首より。

1首目の歌について、著者は

深閑と静まりかえった谷間の山葵田。そこには、山葵を養う清流が、「さわがしきまで」響くのだ。その音を言って、青々と茂った山葵田のいくつもをめぐる静寂と清澄な空気とを感じさせる。

と述べているが、まさにその通りだろう。
「やしなふ」という動詞の選びが良く、また「やしなふ水は」の「は」の使い方も絶妙だ。「山葵田をやしなふ水の音ぞきこゆる」とつながってしまってはダメなのだ。

著者が「山葵田」の一連を最初に読んだ時の感想として「こんなに清冽な世界が短歌によってかもし出されていることに感動した」と記しているのも、よくわかる。

1991年5月30日初版、2003年4月30日四刷、本阿弥書店、2000円。

posted by 松村正直 at 06:23| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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