2015年03月12日

秋葉四郎著 『短歌清話 佐藤佐太郎随聞 上』


秋葉四郎さんが、師の佐藤佐太郎の言行について日録風に記したもの。上巻は昭和45年から52年まで。

上下巻各500ページにも及ぶ分厚い本だが、すこぶる面白い。夢中になって読んでしまう。もっとも、佐太郎に興味がない人には少しも面白くないに違いない。

佐太郎が斎藤茂吉について『童馬山房随聞』を記したように、かつては弟子が師に付き随って、その言行を書き止めておくというスタイルがよく見られた。「随聞」という言葉を調べると、古くは鎌倉時代に懐奘が師の道元について記した『正法眼蔵随聞記』にまで行き着く。

そう言えば、「論語」にしても「聖書」にしても「コーラン」にしても、孔子やイエスやムハンマドが直接書いたわけではなく、弟子たちが師の言行を書き残したものだ。つまり、こうしたスタイルは時代を超えて普遍的な意味を持っているのだろう。

本書を読んで驚かされるのは、師弟の関わりの濃密さである。月に何度も佐太郎の家に通っては、部屋の整理や庭木の手入れ、車の運転、孫の勉強の相手など、様々な用事をしている。もちろん短歌の指導も受けているのだが、感覚としては「内弟子」に近い。

そうした関係は時代遅れだと思う一方で、その濃密さを羨ましく思ったりもする。

2009年9月27日、角川書店、2857円。

posted by 松村正直 at 06:28| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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