2015年03月06日

後藤惠之輔・坂本道徳著 『軍艦島の遺産』


副題は「風化する近代日本の象徴」。

長崎大学大学院教授で工学博士の後藤とNPO法人「軍艦島を世界遺産にする会」理事長で元島民の坂元の共著。日本の石炭産業の歴史、端島(軍艦島)炭鉱の歴史、端島の生活、今後の保存活用などが記されている。

「緑なき島」と呼ばれた端島では、屋上に「青空農園」が作られていたそうだ。

キュウリ、トマト、ナス、大豆、サツマイモなどが植えられ、驚くことに水田も張られてコメ作りもなされた。

こうした端島の生活の細部が、今後さらに明らかになっていくといい。現在では無人の廃墟となっているが、かつてそこに5000人を超える人々の暮らしがあったことを忘れてはならない。

端島に住んでいた私たちにとって、この島は「軍艦島」ではない。私はいま「軍艦島を世界遺産にする会」を主宰しているが、これはあくまでも外側からこの島を見たときの表現である。

「軍艦島を世界遺産に」という思いは、内側、外側の視点をも考えてのことである。「端島」として眺めたときには気づかなかったものが、また逆に「軍艦島」として眺めたときには見えなかったものが見えてくるのである。

こうした二つの観点がうまく交差することによって、貴重な近代化遺産の保存や活用が図られるといいなと思う。7月には長崎に行く予定があるので、その時に軍艦島も訪れてみたい。

2005年4月12日、長崎新聞新書、952円。

posted by 松村正直 at 06:54| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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