副題は「近現代短歌ベスト100」。
明治天皇、落合直文、伊藤左千夫から俵万智、穂村弘にいたるまで、近現代の歌人100名の歌が生年順に収められている。初出は「文藝春秋」2013年1月号。その時も読んだのだが、あらためて読む。
かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は真実を生きたかりけり
高安国世『Vorfruhling』
について、解説で岡井隆は
作者は進学志望を医師から文科(ドイツ文学)へと変えた時の心理が背景にあるというが、それはこの一首にとってどうでもよい。
と書いている。「どうでもよい」と言い切るのはすごいなあ、と思って読む。この歌は歌集では長い詞書が付いているので作歌の背景は明確なのだが、そうした個別の事情を超えたところに普遍性を獲得しているということだろう。
2013年3月20日、文春新書、880円。