2015年03月03日

『新田寛全歌集 蝦夷山家』から(その6)

春浅き夕べを来りオーロラの顕ちし噂など人のして行く
春あはき感傷揺りてオーロラの顕ちし噂はひろごりにけり
春の夜のこころあどなく見のがししオロラのひかり想ひ見にけり
寒さいま極むとするか書棚(ふみだな)の玻璃にこごりて氷花(ひばな)きらめく
この海の氷上荷役とふは今もありや我が行きて見ざること久し

昭和13年の「うつそみ」8首より。

1首目、「オーロラ」と言えばアラスカ、カナダ、北欧などをイメージするが、樺太でも見られることがあったのだろう。もっとも噂になるくらいだから、ごく稀なことだったのだ。
2首目、早春の感傷的な気分とオーロラのゆらめきが響き合う。
3首目、「あどなく」は「あどけなく」と同じ。見られなかったオーロラに想いを馳せている。
4首目、「氷花」は空気中の水分が氷結したもの。部屋の中でもこれなのだから、厳しい寒さが想像される。
5首目、「氷上荷役」は氷の張った海の上で、船に荷物の積み下ろしをすること。冬の樺太の名物だったようで、よく絵葉書などになっている。

posted by 松村正直 at 07:07| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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