2015年02月26日

池内恵著 『イスラーム国の衝撃』


イスラーム政治思想史と中東の比較政治学や国際政治学という二つの面からイスラム国について論じた本。歴史的な縦軸と同時代的な横軸の両方からの分析と言ってもいいだろう。組織の変遷、「アラブの春」の影響、ジハード思想、メディア戦略など、さまざまな角度からイスラム国の実態に迫っている。

著者は独文学者・池内紀の子息。明晰な分析と切れ味の良い文章が印象的だ。イスラム国を含めた中東問題の根深さと、新しい秩序を確立することの難しさを改めて感じさせられる内容であった。

イスラム過激派を「逸脱した集団」や「犯罪集団」などと矮小化して捉えるのではなく、また「アメリカ中心のグローバリズム」への対抗勢力として過大評価するのでもなく、できるだけ客観性を重視した視点から描き出そうとしている。

その中にあって、奴隷制をめぐって書かれた下記の部分には、著者の主張が色濃く表れているように感じた。

イスラーム世界にも、宗教テキストの人間主義的な立場からの批判的検討を許し、諸宗教間の平等や、宗教規範の相対化といった観念を採り入れた、宗教改革が求められる時期なのではないだろうか。

2015年1月20日、文春新書、780円。

posted by 松村正直 at 21:56| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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