クシユンコタン・コルサコフの海をただに埋め列なむ巨艦まさ目には見つ(望艦)
超弩級山城・扶桑・榛名・比叡(ひえい)はちまん揺がずわだつみを圧す
海馬(トドモシリ)の島と見るべくうかび立つ航空母艦の図体(づたい)におどろく
つぎねふ山城・榛名沖にかかりなほし山なす高さたもてり
我が家に昨夜(よべ)来し兵ら莞爾(にこ)として我を迎ふる舷梯(タラップ)に寄り(訪艦)
昭和10年の「聯合艦隊入港」15首より。
「九月六日午前六時」という日時が付いている。
連合艦隊が大泊に入港した様子を詠んだもので、当時作者は大泊高等女学校勤務であった。
1首目、クシュンコタン(久春古丹)は江戸時代、コルサコフはロシア領時代の「大泊」の呼び方。今はそこが日本領になって、というニュアンスか。
2首目、「山城」「扶桑」「榛名」「比叡」は戦艦の名前。「はちまん揺がず」は「少しも揺るぐことなく」という意味だろう。
3首目、「海馬島」は樺太の南西端にある島。空母が島影のように大きく見えたのだ。
4首目の「つぎねふ」は「山城」にかかる枕詞。沖に出てもまだ山のような高さでなのである。
5首目、地元の有力者による船の見学や兵との交流が行われたのだろう。