2015年02月19日

『新田寛全歌集 蝦夷山家』から(その2)

蜜柑箱かさねて吾子が作りたるジャンプ台はけさの雪に埋れつ
妻とふたり昼餉食したり雪あそびにほうけし子らの帰り来らず
氷下魚(かんかい)を釣りゐるをのこひとりなり犬のあたまを撫でてゐしかも
氷下魚を釣りゐるをのこ寒からむ犬のはだへに手をぬくめをり
床の上に魚屋(いさば)が投げし凍て魚のつぶてのごとき音たてにけり

昭和5年の「氷下魚(かんかい)」10首から。
「氷下魚」は「こまい」とも呼ばれるタラ科の小型の魚。

1首目、「蜜柑箱」は最近では段ボール製だが、当時は木製。「ジャンプ台」はスキー遊びに使うのか。
2首目、雪の中に出て行ったまま帰らない子供たち。
3・4首目は氷下魚釣りの場面。海に張った氷に穴を開けて釣っているのである。お供の犬に触れて手を温めているのがいい。おそらく樺太犬だろう。
5首目、「いさば」は行商の魚売りを意味する東北方言のようだ。新田は福島県伊達郡の生まれ。カチンコチンに凍った魚を手荒く放り投げている。

posted by 松村正直 at 19:01| Comment(0) | 樺太・千島・アイヌ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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