2015年02月06日

内田樹著 『ぼくの住まい論』


2012年に新潮社から出た単行本の文庫化。

2011年に神戸に自宅兼道場である「凱風館」を建てた著者が、「土地を買う」「間取りを決める」「材木を得る」といった家作りのアレコレや、建築家・工務店・職人との関わり、さらに住まいや道場に対する思いを記したもの。

内田樹の得意とする逆説的な言い回しや問題の捉え直しは、この本でも随所に発揮されている。

「自分にはアジールがある」と思っている人ほど、アジールが要るような状況に陥らない。アジールというのは、そういう逆説的な制度なんです。
教師は自分がよく知らないことを教えることができる。生徒たちは教師が教えていないことを学ぶことができる。この不条理のうちに教育の卓越性は存します。

次の部分などは、おそらく短歌結社や歌会にも当てはまる内容だろう。

(…)できるだけ集団は均質化しない方がいい。性別も年齢も職業も地位も財力も文化資本もばらけている方がいい。メンバーが多様であればあるほど、システムは安定している。

解説はこの家の設計を担当した建築家の光嶋裕介。光嶋もこの凱風館について『みんなの家。〜建築家一年生の初仕事』という本を出している。そちらも読んでみようかな。

2015年1月1日、新潮文庫、670円。

posted by 松村正直 at 20:15| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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