この『チベット旅行記』が、実は一種の〈歌日記〉であることはあまり知られていない。
とあるので、早速『チベット旅行記』を調べてみると、確かに旅の途中でしばしば短歌を詠んでいる。
いざ行かんヒマラヤの雪ふみわけて
法(のり)の道とく国のボーダに
月清しおどろにうそぶく虎の音に
ビチャゴリ川の水はよどめる
ヒマラヤの樹(こ)の間(ま)岩間(いはま)の羊腸折(つづらをり)
うらさびしきに杜鵑(ほととぎす)啼(な)く
毘廬遮那(ビルシャナ)の法(のり)の御旗(みはた)の流れかと
思はれにけるブラフマの川
草かれて尾花も萩もなき原に
やどれる月のいともさびしき
さらに『第二回チベット旅行記』には「雪山歌旅行」として260余首が収められているらしい。う〜ん、興味が湧く。