2015年02月04日

五木寛之著 『わが引揚港からニライカナイへ』


「隠された日本」シリーズの最終巻で、博多と沖縄を取り上げている。
2002年に講談社より刊行された『日本人のこころ5』の文庫化。

私は、数字やデータなどを集めた「歴史」には、もう飽き飽きしている。数字もデータも人間がつくるものだ。もっと生身の人間が持っている実感を大事にした「歴史」、“体温のある歴史”に触れたいし、読みたいと思う。

このように記す著者は、実際に現地を歩き、資料館を訪ね、そこに住む人々の話を聞くことによって、生々しい歴史の姿を甦らせようとする。

それまではずっと、帰ってくるまでが引き揚げだと思っていた。だが、そうではなく、帰った日から引き揚げが、あるいは引揚者の生活というものがはじまったのだった。

自らの朝鮮半島からの引き揚げ体験を振り返って著者はこのように述べる。「帰ってくるまで」ではなく「帰った日から」という言葉にハッとさせられた。樺太から引き揚げてきた40万人の人々にも、同じような苦労があったに違いない。

2014年8月10日、ちくま文庫、780円。


posted by 松村正直 at 07:08| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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