今月はなんと「九十代特集」が組まれている。
しかも20名もの参加があるのがすごい。
人形に服着せるごとゆつくりと腰かけて吾は着替へしてをり
出井義子
店の客は日当り良きを褒めくれどわたしは店先ばかりに居れず
武内重子
作りたる順に並べし干支の馬が貰はれて行くも順位崩さず
長岡すみえ
夫の背骨つなぎてをりしこのボルト焼けずに残りて四年を経たり
土屋智子
映されし航空写真に吾が家あり庭に出でヘリコプターに手を振りし
福原千重
1首目、「人形に服着せるごと」という比喩に実感がある。身体がなかなか思い通りに動かず、時間がかかるのだ。
4首目は亡くなった夫の形見となったボルト。もとは単なる金属であったものが、今では夫の面影を感じさせる大切なものになっている。