「越境する近代」シリーズの11冊目。
副題は「和歌・短歌の政治学」。
明治期の国民国家の形成に和歌や短歌がどのように関わり、天皇と人々をどのように政治的に結び付けていったのかというテーマのもと、序章+10章の論文が収められている。
天皇巡幸、御製、大日本歌道奨励会、心理学、題詠、和歌革新、自己表現、愛国百人一首、ヒロシマなど、取り上げている内容は幅広いが、大きな流れのもとにまとまっているので、著者の関心や主張はわかりやすい。
本書は「新」「旧」両派の断絶よりも、それらがネイション・ビルディングに果たした役割に注目し、その連続性に留意して記述している。
というスタンスは、私の興味ともつながっていて、教えられることがたくさんあった。特に御歌所長の高崎正風の果たした役割の大きさや旧派和歌のその後について知ることができたのは良かった。また、福沢諭吉『学問のすすめ』や坪内逍遥『小説神髄』に和歌・短歌否定論が含まれていることも、和歌革新の前提として踏まえておくべき事実であろう。
歌人と研究者との交流は現在あまり活発ではないが、今後深まっていく必要がある。そのためにも、多くの歌人にこの本を読んでほしいと思う。単に過去のことを論じている本ではない。まさに現在の短歌の問題に深く関わってくる内容なのである。
2014年12月26日、青弓社、3400円。


