2014年12月18日

「立命短歌」第二号(その2)

「立命短歌」第二号には、「立命短歌会OB競詠」として昭和32年から49年に卒業したOB8名の各10首とエッセイが載っている。このような過去(短歌史)への向き合い方が「立命短歌」の特徴だと言っていいだろう。

その中で、井並敏光さんの「立命短歌会の預かりもの」というエッセイが心に残った。

一年先輩の西尾純一(西王燦)君が私の下宿に置いて行った立命短歌会の資料などが詰まった段ボール一箱は、私が第四次立命短歌会の最後の一人であるという事実を指し示すエビデンスとして四十余年私の書庫にあった。
今回、第五次立命短歌会の発足に際し、宮崎哲生君に引き継ぎが出来て喜んでいる次第である。

学生は4年で順々に卒業していってしまう。その「最後の一人」になってしまった心細さ。40年余り持ち続けていた資料は、第5次立命短歌会が発足しなければ永遠に日の目を見ることはなかったかもしれないのだ。

立命短歌会の歴史に関するものが、もう一つある。濱松哲朗の評論「立命短歌会史外伝―小泉苳三と立命館の「戦後」」である。これは、今号で最も注目すべき作品と言っていい。

濱松は、戦後「侵略主義宣伝に寄与した」との理由で立命館大学を追われた小泉苳三の歌を取り上げる。そして、戦前戦後の立命館大学の思想的な変化と、小泉が味わった苦汁を明らかにするのである。

丹念に資料に当っているだけでなく、文章が読みやすいので、小泉苳三について特に興味や知識がなくても十分に面白い。「立命短歌」のレベルの高さを感じさせる内容であった。

posted by 松村正直 at 07:16| Comment(0) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。