カーテンより朝光(あさかげ)の射す床上に猫のいのちはをはりてゐたりなきがらの猫の首よりはづしたり金の鈴つきし赤き首輪をすぎこしをおもへばあはれむすめ二人の婚礼があり妻の死があり猫の骨壺妻の遺影とならびをり秋のつめたき雨は降りつつ死のきはの猫が噛みたる指の傷四十日経てあはれなほりぬ