2014年11月28日

「短歌人」2014年12月号

夏季集会における坪内稔典さんの講演「短歌的と俳句的」が掲載されている。その中にある次の部分に注目した。

例えば、〈たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ〉というのがありまして、これなんか、あちこちでよく引かれたりします。「たんぽぽのぽぽ」という言い方は、江戸時代の俳句にもしょっちゅう出て来る言い方で、(…)ある意味で、「たんぽぽのぽぽ」までは、今までの表現そのまま。ぼくがしたのは何かといえば、最後の「火事ですよ」と言っただけなんです。

この俳句については、河野裕子の「たんぽぽのぽぽのあたりをそっと撫で入り日は小さきひかりを収(しま)ふ」(『歳月』)の本歌取りだと思っていたので、「江戸時代の俳句にしょっちゅう出て来る言い方」というのに驚いた。

肝腎のその江戸時代の俳句というのが挙げられていないので、はっきりわからないのだが、「たんぽぽのぽぽのあたり」という言い方もあるのだろうか。少し調べてみたい話である。

posted by 松村正直 at 09:07| Comment(4) | 短歌誌・同人誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へー江戸の発句ですか、一瞬虚を突かれますね。
現代らしい表現という思い込みがありますもんね。
江戸ではありませんが、加藤楸邨に

  たんぽぽのぽぽと絮毛のたちにけり

があります。わりに有名なのでご存じかもしれませんが。
Posted by なかにしりょうた at 2014年11月29日 00:57
なかにしさん、コメントありがとうございます。
その後、少し調べたところ、坪内さんの「ねんてんの今日の一句」の2012年2月5日に

たんぽぽのぽぽともえ出る焼野かな
    友久

という句がありました。1667年刊行の『続山井』に入っているとのこと。
http://sendan.kaisya.co.jp/nenten_ikkub12_0201.html

鑑賞文に「「たんぽぽのぽぽ」という言い方がはるかな昔にあったことは驚きだ」と書いているので、坪内さんもこの頃に初めて知ったのでしょう。
Posted by 松村正直 at 2014年11月29日 10:08
2012年とは、ずいぶん最近ですね。河野さんの歌の「本歌取り」という松村さんの説はまだ生きているのでは。「ぽぽの」と「ぽぽと」はかなり違う気もします。

もうひとつ気になるのは「しょっちゅう」。私の手元にある歳時記には楸邨の句しか載っていないし、坪内さんが上記のページで挙げているのも一句のみ。「しょっちゅう」というからにはもっとたくさん例句がないといけないですよね。まあ坪内さんは見つけているのでしょうが。

しかし、坪内さん、焼野の句を見つけたときはちょっとショックだったんでしょうね。


Posted by 中西亮太 at 2014年11月29日 19:30
2012年の文章ですので、坪内さんが「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」を作った時に、江戸時代の句を踏まえていたというわけではないでしょうね。

この問題は、もう少し調べてみることにします。
Posted by 松村正直 at 2014年11月30日 11:23
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