2010年に徳間書店より刊行された本の文庫化。
アジア・中東・アフリカなど世界各国の底辺で生きる人々を取材したフォト・ルポルタージュ。登場する国は、インド、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシア、シリア、イエメン、ウガンダ、ルワンダ、エチオピア、コンゴなど。
著者の取材対象は、物乞い、売春婦、路上生活者、薬物中毒者、ストリートチルドレン、元子供兵、ハンセン病患者、障害者など、社会的に差別されている人々や弱者とされる人々である。数多くの写真とともに伝えられるその実態は衝撃的だ。時おり目を背けたくなるほどの悲惨さがあり、一方で逞しさも感じる。
エチオピアのスラムで貯金箱を売る雑貨屋の主人の言葉。
「一ブルだけでもいいんだよ。貯金箱があるだけで嬉しいんだ。いつか、ここにぎっしりお金が貯まることを考えると、やる気が出てくる。うちの息子なんて、毎晩貯金箱を抱えながら眠っているよ」
著者の対象への目の向け方やルポの手法については、常に批判が付きまとう。けれども、この本を読まなければ知らなかった世界や現実があることも確かなわけで、それを伝える力を持った作品であることは間違いない。
私がしたいのは、答えを提示することではなく、物事を考えるきっかけをつくることです。そういう意味でいえば、どんどん批判してほしいと思うし、そこから「では、自分はどうするべきか」ということを考えてほしい。
2014年11月1日、新潮文庫、670円。