「綾部市は、日本国憲法を貫く平和精神に基いて、世界連邦建設の趣旨を賛し、全地球の人々と共に永久平和確立に邁進することを宣言する」という宣言文が、市議会の全会一致で採択されている。
第2次世界大戦後、世界連邦運動というものがあったということを、梅棹忠夫『日本探検』を読んで初めて知った。
綾部市は、いまや日本における世界連邦運動の聖地になりつつある。それは、全国諸都市のトップをきって、世界連邦平和都市の宣言をおこない、その後の世界連邦運動の進展のきっかけをつくった。
1960年に書かれた文章である。綾部には、キリスト教や大本をはじめ、平和運動の下地がもともとあったのだろう。綾部駅の南口には「平和のモニュメント」が立っている。
銘板には「綾部市は一九五〇年、日本で最初の世界連邦都市宣言をおこなった。私たち綾部市民は、これを誇りとして二〇〇〇年、綾部市制五十周年を記念し、ここに世界人類の恒久平和を願い、平和のモニュメントを建立する」とある。
今では「世界連邦」など、アニメかSFの話としか思えない。紛争の絶えない昨今の世界情勢を見ても、世界連邦など夢のまた夢の話である。
けれども、それを夢見た人々や時代のことを、非現実的と嘲笑う気にはなれない。