日本漁業の現状や問題点について、様々な角度から考察した本。
漁業政策、消費と流通、漁業水域、資源管理、養殖、漁協、漁村となど漁業従事者など、多くの視点から日本の漁業の姿を描いている。それだけ、問題が複雑であるということでもあろう。
著者は現状の漁業をめぐる議論に大きな不満を抱いている。
このように見ていけば“漁業は斜陽産業”と揶揄する議論がいかに無駄かに気づく。需給動向を俯瞰すれば、供給サイドだけの問題にするのはもはや時代遅れである。
乱獲とは直結していないにもかかわらず、そのことを知らない人が水揚げ量の減少傾向を見ればそう思うであろう。その誤解を意図的に導き出す乱暴な手口が乱用されているのだ。
今日巷に出回っている漁協批判は、漁協の存立構造をまったく理解せずに表層的な問題ばかりを論うものがほとんどである。
こうした批判が随所に出てくる。その一つ一つになるほどと思いながら読んでいくのだが、何かそれに代わる解決法が示されているかと言えばそうではない。絡み合った問題の複雑さにますます頭を抱え込むことになりそうだ。
2014年3月10日、ちくま新書、840円。