「隠された日本」シリーズ第4弾。
今回は加賀と大和を取り上げている。
金沢は若き日の著者が一時住んでいた町であり、斑鳩には著者の弟の墓がある。加賀も大和も、著者と関わりの深い土地と言っていいだろう。
加賀・大和の地をめぐりながら、著者は吉崎御坊、金沢御堂、一向一揆、土蜘蛛、太子信仰、水平社運動など、自らが関心を持つ事柄についての考察を深めていく。歴史が単なる過去のものとしてではなく、時代を超えて現在につながるものとして甦ってくる。
本の冒頭には大伴家持の歌が引かれ、小野十三郎の「短歌的抒情の否定」の話が出てくる。また、大津皇子、大伯皇女、柿本人麻呂など『万葉集』をめぐる考察もある。
肉声として発せられて人びとのこころを揺さぶるためには、どうしても言葉のリズムや音の美しさが必要だ、と私は思っている。
このシリーズもこれで4冊読んだわけだが、司馬遼太郎の『街道をゆく』に似たスタイルという気がしてきた。
2014年7月10日、ちくま文庫、780円。