民俗学者の宮本常一が残した10万枚にもおよぶ写真を紹介しながら、石川直樹(写真家)・須藤功(民俗学写真家)・赤城耕一(写真家)・畑中章宏(作家・編集者)らが、宮本と写真の関わりについて論じている。
とにかく載っている写真がいい。船に乗る学校帰りの子どもたち(山口県浮島)、竹製の籠に入った赤ちゃん(香川県豊島)、山仕事帰りの男(富山県立山)など、一目見たら忘れられない印象的な写真がたくさんある。
先生は写真に「私を出すな」ともいいました。これは主張する写真、すなわち芸術写真は撮るなということと同じです。「読める写真」、これは主観を交えない記録写真ということですが、たとえば畑を撮ったら、その畑の広さと畝作り、そこに何を植えて、どんな保護柵があるかがわかるような写真ということです。 (須藤功)
記録というけど、記録じゃないよ。ただ自分が惹かれて撮っているんだよ、だから強いんだよ。いい親子だなぁとか思うと撮ってる。近所に似てる道だなぁと思うと撮ってる。 (荒木経惟)
評価の仕方に違いはあるけれど、どちらも宮本の写真の方法や魅力を的確に伝えている。これは短歌にも通じることだろう。
2014年8月25日、平凡社コロナ・ブックス、1600円。