ひかりたつ崖を飛びたる白ありきあはれ落ちずに空(くう)をただよふ
例えば、この歌を読んで思い出すのは、石垣りんの「崖」という詩。
(前略)
とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)
それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。
玉砕の島であるサイパンの崖から飛び降りた女たちの姿だ。
十六歳の少女「むかしのわたしは」とうつむき語る秋の水辺に
この歌からは、今話題になっている佐世保の少女殺害事件のことを思ったりする。
そういう連想は短歌とは直接関係ないのであるが、純粋に作品を読むだけではなく、そういうことも含めて読んで、味わっていることが多い。