記事の中に、こんな文章がある。
井上さんは大学卒業後、産経新聞社にカメラマンとして入り、司馬さん発案の企画「美の脇役」につける写真を担当。見過ごされがちな細部を紹介する狙いで、四天王像に踏まれる邪鬼や黒書院のふすまの引き手などに宿る美を引き出した。
この「美の脇役」は、産経新聞社編・井上博道写真で本になっている。1961年に淡交社から単行本が出て、2005年には光文社の知恵の森文庫にも入った。
井上の写真とともに、奈良本辰也、山口誓子、重森三玲、前川佐美雄、岡部伊都子など、関西にゆかりのある人々が毎回文章を書いている。その中に「京都大助教授・高安国世」という名前もある。連載26回目の「二条城東大手門の鋲」という回だ。
ここに見る画面は、だから城という実用的価値をはなれて、もっぱら直線と円との組み合わせから、かもされる一種の美を追究したものと見なければならない。そして無数の小さなびょうと似かよいながら、突然変異のように見事に成熟したこの一個の乳房に眼はすいつけられてしまう。
当時46歳の高安の書いた文章である。