副題は「いすみ鉄道公募社長の昭和流ビジネス論」。
「いすみ鉄道 社長ブログ」の記事を再構成し加筆したもの。
ブリティッシュ・エアウェイズ勤務を経て、2009年に千葉県のローカル私鉄「いすみ鉄道」の公募社長となった著者が語るビジネス論。
ところどころカチンと来るような物言いがあるのに、不思議と引き込まれてしまう。カチンと来る部分もまた、読者を引きつけるための著者の挑発なのだろう。「乗らなくてもよいです」「来ていただいても何もありません」といった、いすみ鉄道のキャッチフレーズも、そうした著者のしたたかな戦略なのだ。
今、過去の廃止反対運動を振り返ってみると、事実として、「乗って残そう運動」をやった結果、存続したローカル線は皆無に等しい状況です。
ローカル線というのは地元の人が足として使うためのものだと長い間言われてきて、過疎化や少子化、マイカーへの移行で結局ダメになってきました。だから私はまず観光路線化して乗車人員を増やし、テレビや雑誌で知ってもらうことで(…)
かつて、昭和の時代はローカル線といえばイコール田舎であり、ダサくてどうしようもないような「お荷物」というイメージがありましたが、今、ローカル線は観光のツールであり、お客様を地元へ呼ぶアイテムになっていると言えるようになりました。
発想を転換し、別の枠組みで捉え直すことによって、新たな価値や需要が生まれてくる。鉄道モノとして買った本であったのだが、確かにビジネス書としても(ところどころ反発を覚えつつも)役立つ内容だと思った。
2013年7月10日、晶文社、1500円。