無籍、定住しない、定職に就かないという願望は、いつの時代も人間のなかにはあるのだろう。そういう願望と、三角寛の本がいまだに読まれたり売れたりすることとは、決して無関係ではないと思う。
家も家族も持たず、定職にもつかない人生。好きなときに好きな場所へいく人生。ほとんどの人は、車寅次郎こと「フーテンの寅さん」に“自由人”のすがたを見いだして、一種の羨望を抱いているのだろう。
こういう文章を読むと、何を気楽なことを言ってるんだかと思う一方で、今でも胸の疼くような思いがする。そういう暮らしに憧れていた日々が、確かに私にもあった。
遠き日の三つの誓い「結婚しない・就職しない・定住しない」
『駅へ』